鬼の生き様
庭先の四人は濡れ鼠になりながら呆然と立ち尽くしていた。
だがそれは雨によるものばかりではない。
「終わったか?」
左之助が立ちすくむ歳三と総司に訊ねた。
「殺(や)った」
歳三は感情を感じさせぬ短い言葉で断定する。
「ご苦労様でした」
山南は溜め息をしつつ腕を組む。
他の者にも、喜びの感情は一切見受けられない。
「嫌な気分ですね」
総司は哀切すら感じさせるように表情を歪めながら言った。
「しかし、本当に無念な話だぜ」
左之助が、これははっきりと嘆きの声を発した。
「あの人は確かに乱暴者だったかも知れねえけど、間違いなく一廉の壮士だった。
本当ならこんな死に方なんてするべき人じゃなかったのに…」
左之助の愁傷とした声に、総司は躊躇うように口をもごもごとさせた。
まるで言葉を発する事が罪であるかのように。
(一番それを分かっているのは……。
哀しんでいるのは……)
総司は歳三をジッと見つめた。
しかし夜目に馴れてはきていたが、頬被りをしている歳三の表情は闇にまみれて見えない。
四人の刺客が八木邸が退去した。
左之助は平間を完全に殺す事はしなかった。
息の根がまだ残っているのを分かっている。
歳三もそれは把握している。
左之助ならば、平間を生かして逃す事をしてくれるだろうと思っていた。