鬼の生き様


 春の近さを思わせるほのかな日のぬくみは、のんびりと過ごす正月にはもってこいである。
歳三は源之助と力之助が凧を揚げているのをのんびりと見ていた。

羽子板の音が心地よい。

長閑な風景が、春風のように吹き込んでくる。
最近は、こうもゆっくりと過ごした日がなかった。

「きゃあ!」

桃源郷のような世界から、現実に引き戻された歳三は慌てて声のした方へ向かった。

「どうした!」

そこには刀傷を負った少年が立っていた。

「匿ってくれ…土方さん!」

その少年は紛れもなく山口 一であった。


「山口!一体どうした」

「あの篠原道場の一件を覚えているか?」

忘れるわけがない。歳三は頷くと山口は語り始めた。

 篠原道場はあの日以来、道場を閉めたと風の噂で聞いていたが、気を病んだ篠原源一は自害をしたらしい。
その原因は山口にあると門弟達は血なまこになって山口を捜していたという。

そんな矢先に門弟と山口は町中でバッタリと会ってしまったらしい。

「撒けたとは思うが、奴等は今もここら辺をうろついているだろう」

歳三はとりあえず山口を屋敷内に入れた。


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