残り100日の私と大好きな君
その時、ほんの少しだけ、咲楽ちゃんの瞼が動いた気がした。
「さ、咲楽ちゃん?」
そう呼びかけると、ゆっくりと少しだけだけど、咲楽ちゃんは目を開いた。
もう一度、手を握ると、微かな力で手が握り返される。
自分の両目から、大粒の涙が何粒も何粒も零れた。
「咲楽ちゃんっ、咲楽ちゃんっっ」
嬉しくて、何度も、何度も名前を呼んでしまう。
すると、咲楽ちゃんは小さく笑みを浮かべた。
僕の声を聞きつけてか、看護師さんと先生が急いで病室に入ってくる。
でも、心電図のモニターを見た先生は、看護師さんに小さな声で「至急、御家族呼んで。」…と。
いくら、医療の知識がなくても、それが何を指すのかくらい察しがついた。
僕は、震える手で咲楽ちゃんの頭を撫でた。
咲楽ちゃんは、目を細めて幸せそうな表情をする。
僕は、その表情をみて、また泣きそうになってしまう。
あ、そうだ、今度こそちゃんと伝えなきゃ、僕の答え。
「咲楽ちゃん、聞いて?」
コクン
「僕、ずっと前から咲楽ちゃんのことが好きでした。もし、咲楽ちゃんがいいなら、お付き合い…させてください」
声が震える。
でも、咲楽ちゃんにはちゃんと届いたようで、咲楽ちゃんは目を見開いて、それから笑顔を浮かべながら涙を流した。
「OKって捉えても、いい?」
コクン
思わず、自分の目からも涙がこぼれ、でも同時に笑顔になる。
僕は、そっと咲楽ちゃんを抱きしめた。
あーあ、我ながらバカだなあ。
今、お付き合い始めたら、さらにお別れが辛くなる。
それでも、言わなかったら一生後悔してると思った。
だから、ほんの少しでも、数分でもいい、咲楽ちゃんと付き合えた事実が、とても嬉しかった。