学年一の爽やか王子にひたすら可愛がられてます
ド─────ンッ
大きな音が鳴ったのと同時に、そこにいた人たちの歓声が上がる。
空に飛び上がったそれは、大きく広がって、赤や黄色、緑と、色を変えながら夜空を鮮やかに彩っていく。
バンッ
バンッ
大きく上がった一発目の花火のサイドから、小さな細かい火花がピカピカと光りだす。
「すっごい綺麗っ!!」
「本当…」
鈴香ちゃんの声にそう返事を返す。
この景色を、誰かと見ている。
そのことがあまりにも嬉しくて、思わず握られたままになっていた手をギュッと握る。
「誘ってくれて、ありがとう。鈴香ちゃん」
そう声に出して、私より少し背の高い彼女の横顔を見ようと、花火から目を離した瞬間。
ほんの一瞬だった─────。
ヒュ───────
え?
バンッ──────
何度目かの大きな花火が打ち上がった時、
いつも隣で香っていた微かな甘い香りが
今は、はっきりと香って、鼻を抜けてた。
なんだろうこれ。
目の前には、
目をつぶった綺麗な彼女の顔が
すぐ間近にあって。
唇には、生暖かい、柔らかな感触。
なにこれ。
こんなの、知らないよ。