それもまた一つの選択
午前中に教室は終わり、平野さんと二人でランチに行った。
生まれて初めて、同級生と出かけたのがこれ。

それを平野さんに伝えると

「私なんかでいいのかな!?」

と目を丸くしながらも喜んでくれた。
私の方がいいのかな?ですよっ。

「でも、どうして料理教室に行こうとしたの?」

パスタを食べながら平野さんに質問された。

「…付き合っている人が料理上手くて」

「なるほどー!!あの、よく一緒に帰っていた人?」

平野さんは人差し指を上に向けてくるくると回した。

「うん。今は大学生だけど」

平野さんとは1年は違うクラスだったのにね。
みんな、結構見てるんだな、他人の事って思った。

「ねえねえ、いっぱい質問したい事があるの!」

平野さんは目を輝かせる。

「どっちから付き合おうって言ったの?」

「ええっ、どうしてそんな事を?」

そう聞くと平野さん、急にモジモジし出した。

「実は同じクラスに好きな人がいて…」

えー?

「誰?」

嫌がられるかなって思ったけど、思わず聞いた。
平野さん、顔赤い。
それがまた、可愛い。

「…柏原君」

後ろに倒れそうになった。
あの、柏原君!

「か…柏原君、良い人よね」

咽そうになりながら言った。
本当に良い人。
私の事をあんな風に庇ってくれた人はいない。

「…こんな事言ったら今井さんに悪いかもしれないけれど。
皆の前であんな風に言ったのを見て本当にかっこいいなあって。
そんな友達、いらないって言えるの、凄いなあって」

私も頷いた。
それはよくわかる。
私も、凄いなあって思ったし、泣きそうになったあの時。

「今井さん、柏原君とは話してるから羨ましいなんて思っちゃう」

えー、それは誤解ですよ。

「柏原君は彼に頼まれて私の面倒を見てくれているだけだから、大丈夫よ、平野さん」

うん、絶対に柏原君を好きになることはない。
人間的には好きになっても、恋愛感情を持つことはないわ。

「もし協力出来る事があればするし…一度彼に聞いてみようか?柏原君の事」

その瞬間、平野さんの顔が真っ赤になった。
…本当に可愛い!!

「いや、いい!
もし、辛い結果なら嫌だし。
柏原君に好きな人や彼女がいるなら、今のままがいい。
気まずくなるのは嫌」

そりゃそうよね。

「ところで彼氏さんとはどうやって付き合ったの?
どちらから告白したの?」

ああ、そこに話が戻った…。

「…どちらも告白なんてしてないよ。
トキさんの友達が付き合えって言ってくれたの」

「彼氏さんのお名前、ときさんって言うんだ!!」

いや、平野さん、そんなところ、突っ込む?

「ええっと、下の名前ね。苗字は藤野」

その瞬間、平野さんは目を見開いた。

「藤野さんって…あのゲームで有名な藤野さんよねっ?」

いや~…ゲームの事、私よくわからない。

「凄い人が彼氏さんなのね!!」

トキさん、本当に凄い人なんだ…。
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