囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
暫くすると彰貴さんのスマートフォンが鳴り出した

「失礼…少し話してくるよ」

彰貴さんは私の頭をポンポンと叩いてこの場を離れた

ぼんやりと窓の外を眺めれば晴れ渡る空の下
高いフロアからは街並みが一望出来て、遠くに海も見えた

(こんな高層からの景色…久しぶりだなぁ…)

両親がいた頃は幾度か連れて行って貰っていたけれど…

失う事なんて簡単だ

だから失いたくないと思うのだろう

小さくため息をつく




「ため息かい?確かにこんな会は君にはつまらないですよね」

ユキトさんが傍にきた

「あ、いえ…場違いだなと感じているだけです」

ちらりと周りに目を配らせるとユキトさんは小声でこう切り出した

「月島さん…では無かったよね?以前は…」

「……」

ユキトさんとは過去に本当に会って居るのかもしれない

「それが…何か?」

「ああ、何か責めようとかではないよ…ただ、君のお母さんにそっくりだなとさっき思ったんだ」

「え…」

(母の知り合い?)

疑問に思ってユキトさんの次の言葉を待つと

ユキトさんが目を細める

「小学校の同級生なんだ…可愛らしい女の子だったからね…よく覚えてる、彼女の名前が月島さんで、確か結婚して姓が変わっていた筈だったから…と、思って…それにお母さんは残念だったね」

(ああ、知っているのか)

亡くなった時に同級生などに知らせたはずだから知っていてもおかしくない

「はい…有り難うございます。…元は違う父の姓でした…色々ありまして私はその家の人間ではなくなりましたので…」


「そうか……立ち入った事を聞いたね、すまない
君がしっかりしていて安心したよ、彰貴をよろしく頼むよ…アレは本当はかなりの甘えん坊だからね…ははは」

「そうなんですね!フフフ」

それ以上、ユキトさんは何も言わず離れていった

入れ替わるように彰貴さんが戻る
険しい表情で先程慌ててやって来た秘書に何やらサインをして手渡していた

「那寿奈すまなかった…」

「大丈夫ですよ?ユキトさんとお話していました」

「ええ?余計なこと聞いてないか?」

怪訝な顔をした彰貴さんが可愛らしくてつい

「ヒミツです」

なんて、からかってしまう

「こら…」

彰貴さんが私の頬をムニっと掴む

「いはい(いたい)…」

「くはは、柔らかいなぁ那寿奈の頬は…」

笑っているのに

(震えてる?)

指が唇が僅かに震えていた

心配になって見上げても表情は変わっていなかった




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