愛してない。
「え!?知らないの?俺、君のこと知ってたよ?
萩原千紘ちゃん?」
ドキン――――…
何この鼓動…。
おかしい、おかしい。
急に名前を呼ばれたからドキっとしたんだよ。
目のやりどころがわからない私を
彼はにこにこしながら見ている。
八重歯がちらりと見えていた。
「それにメガネ外したほう可愛いよ?」
そう言ってメガネは床に落ちた。
ていうか近くない?
こういうのは慣れていない。
「あの…」
「いっつもそうやって真面目な顔しててさ、笑ったほういいと思うよ?これ使えよ」
白いハンカチ。
どんどん涙の痕がついていく。
知らない、なんで涙が流れるのか。
あふれるのは涙で、
今までの悲しみが涙になったんだ。