この手だけは、ぜったい離さない



あかりがいなくなってからというもの、せめて自分の身くらいは自分で守れるようにならなきゃなって思って。

売られたケンカは片っ端から買ってやった。



『ううっ……いってぇ……』

『お前が悪いんだろっ!』



教室で啓太に『泣き虫』ってからかわれ頭を叩かれたときに、顔面を殴ってしまったことはちょっとやり過ぎたかなって反省したりもしたけど。

まぁそうやってやり返していくうちに、周りからはいつしか『ケンカが強い』っつーレッテルを貼られるようになっていた。



そのころから『泣き虫』ってバカにされることはなくなった。



中学生になると『仙崎洋は強い』っていう噂を聞きつけた他校のヤンキーにもケンカを売られたりもした。

ぜんぶ返り討ちにしてやったけど。



そんなことばっかやってたから、気づけば俺は周りから怖がられる存在になってた。

っていう……中学1年生、2年生くらいのころはまぁ荒れに荒れていたっつー話しだ。



『なぁ、洋。お前、南海のことどーすんの?』



まったくケンカを売られることがなくなった、中学3年生。

雪が降りやまないバレンタインの日に、俺は靴箱で同じクラスの南海遥に告られた。



『どうって?断るに決まってんじゃん』



こうして誰かに告白されることはこれで何回目だっけ?

いちいち数えてねぇけど、はじめてではなかった。



< 202 / 228 >

この作品をシェア

pagetop