同僚は副社長様
会が始まって2時間ほど経った頃だろうか。
『美都ちゃん。』
不意に前方から呼ばれた名前に、唐揚げに食いついていた視線がその声の主に釘付けになる。
「……え?」
そこにいたのは、友永さんだった。
さっきまで私から一番離れたところにいたのに。いつの間に?
––…というか、私の名前。
自己紹介は、友永さんがいない時にしかしていない。
彼が来てからも、誰も私と話をすることもなく、ひそひそとご飯だけを楽しんでいたから、彼は私の名前を知らないはずなのに。
『…その反応、やっぱり覚えてないんだ。ちょっとショックかな。』
「え、あの…?」
彼が発しているのは日本語なのに、意味が全くわからない。
私が覚えてないってどういうこと?やっぱり、友永さんと私はどこかで会ったことがあるのだろうか。
わけもわからず混乱してることがわかったのか、友永さんは苦笑をこぼした。その笑顔さえも、なんだか格好いい。
『友永 芽衣、覚えてる?』
彼から告げられた名前に、ハッとした。
覚えてるも何も、芽衣は小学生の頃から高校まで、学生時代のほぼ全てを一緒に過ごして来た親友だ。そして最近、結婚式の招待状をくれた、私の数少ない大切な人。