同僚は副社長様
芽衣と同じ名字…っていうことはまさか。
「ひー…くん?」
『正解。』
彼の素性を思い出した私を、とても嬉しそうな笑顔で見つめてくる彼。
彼、友永 響は、芽衣のお兄さんだ。
小学生の頃、芽衣にひっついていた私をとても可愛がってくれた人。
芽衣とは4つ年が離れていたから、ひーくんが中学に上がると、途端に遊ぶ機会はなくなってしまったけれど。
「うそ、本当に?」
『本当だよ。こんなことで嘘ついてどーすんの。』
衝撃の再開に、まともに頭が働かない私に、昔と変わらず優しげな笑顔を向けてくれる。
遊んでもらってた時も格好いいとは思っていたけど、何年も会わずに成長して再開すると、より格好よさが倍増されている気がする。
『大きくなったね。』
「ひー、……友永さんこそ。」
あれから10年以上経つのに、ひーくんと呼ぶのはなんだか照れくさくて、思わず他人行儀に呼んでしまった。
それゆえ、逸らしてしまった視線。
こういう人見知りはいい加減直したいのに、人というのは意識しただけでは早々変われないものだ。
『ふっ、大きくなっても、そういうとこは相変わらずだな。』
「え?」
『その呼び方、嫌だ。響って呼んで。』
その言葉は、昔も聞いたことがあるから、思わず俯いた視線を彼に戻してしまった。
その途端、彼の期待を込めた瞳と重なる。