同僚は副社長様
「すごい荷物になっちゃったね」
買い物帰り。
古川くんの自宅へ向かうべく、私を助手席に乗せた外車は古川くんの運転で、ネオンが光る夜の街を駆け抜けていく。
後部座席には大きな買い物袋が2つとお米 10kg が一つ、ドドンとスペースを占領している。
「俺も驚いたよ。久しぶりにスーパーなんて行ったなぁ」
「古川くんは、自炊しないの?」
「何を今更。しないっていうか、できないから、こうして美都に頼んでいるのに」
運転座席から、クスッと笑い声が漏れる。
確かにそうか。
古川くんが私に頼んでいるのは、彼自身ができないからって、本人から聞いていたのに忘れていた。
プライベートの時間もほぼ一緒にいるようになって、なんだか思考が麻痺してきている気がする。
「そうだったね。変なこと聞いてごめん」
「別に謝らなくていい。業務中じゃ絶対見られない、美都の少し抜けたところがみれて嬉しいよ」
…あ、まただ。
彼が放つ何気ない一言に、私の心臓が反応するのは、これで何回目だろうか。
私へのフォローも、褒め言葉も、古川くんにとっては深い意味もないんだろう。
それをわかっているくせに、過剰に受け取ってしまうのは、どうしたって私の経験値が乏しいせいだ。