同僚は副社長様
私だって、彼氏の一人や二人はいた。
それなりに、恋愛だってしてきたのに。
古川くんと出会ってからの私は、他の異性とだったら難なく対応できることも、古川くん相手だと私が培ってきた恋愛スキルは何の役にもたたなくなるから不思議だ。
きっと、端から見たら、私の古川くんの想いなんてダダ漏れで、わかりやすいのかも…。
けれども出会って7年、古川くんはいつだって私を同期の一人として接してきていたということは、古川くんに私の気持ちはバレていないはず。
それなのに、この態度の変わりようは何なんだろうか。
私に借りができたから、態度を変えたというわけでもなさそうだし。
気にかかるのは、彼の想い人だった幼馴染の結婚だ。
そうだ。彼女の結婚が決まった時から、徐々に古川くんの私への態度が変わっていった気がする。
プライベートの時間では同期の関係に異様にこだわりだしたり、突然に私のことを可愛いだとか言いだしたり、今回の頼み事だってそう。
まるで、ぽっかり空いた心の穴を煩雑なもので無理矢理に埋めているようにも見える、古川くんのこれまでの言動と行動。
「…なるほどね」
「何?どうかした?」
「あっ…ううん。なんでもない」
つい、ぽろっと出てしまった独り言に、素早く反応した古川くんに何でもないと取り繕って、私はふいっと助手席の窓から見える景色に目を向けた。