同僚は副社長様


私の中で、古川くんの態度の理由が腑に落ちた瞬間、肩からスッと何かが抜け落ちたような感覚がした。

やっぱり、古川くんに期待するのは、私のわがままなのかもしれない。

期待しても無駄だと、もう一人の私が囁いた。

幼馴染に失恋した今、彼の一番近くにいる存在は私だろう。

だから、気にかけ始めた。私の想いが報われたわけじゃない。

彼のそばにいたのが私なだけ。

私じゃない、別の女性だったら?こんな風に、彼の自宅に行くことなんて、可能性はゼロだったんじゃない?


そう考えると、今まで舞い上がっていた私の心がスーッと低迷していくのを感じた。

私が彼を変えたんじゃない。

これは古川くんにとって、一時の気の迷いってやつだ。

これから先、魅力的な女性が古川くんの前に現れたら、私の存在は不要になる。

いつか、このお役も御免になる。


どんなに彼に甘い言葉を言われても、それらしいことを言われても、いつかは醒める夢でしかないのだから、期待なんてしないほうがいい。

7年も片思いしてきたからか、恋に臆病になってることはわかっているけど、これ以上勝手に失恋して勝手に傷つくのは嫌だから。

だから、これからも彼にとって、いい同期でいよう。


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