同僚は副社長様



「あ〜…数時間ぶりの美都のご飯、美味すぎる。心が洗われるわ」


今日の夕ご飯は麻婆豆腐をメインにした。

帰宅した時間が遅かったのもあり、楽チン料理にしてしまったけれど、古川くんは頬が緩んだ顔で麻婆豆腐をかき込んでいる。


「辛さ加減はどう?辛すぎたりしてない?」

「うん、ちょうどいい感じ。甘すぎなくて辛すぎない。美味いよ、本当に」

「そう、よかった。おかわりもあるから、食べてね」


スーツからラフなTシャツ姿に着替えた古川くんは、オフィスでの副社長モードは完全オフだ。

社員のみんなが、こんな緩みきった顔でご飯食べてる姿見たら、なんて思うんだろう…。

私は片想いフィルターかかってるから、可愛くて仕方ないのだが。


「美都は食べないの?」


キッチンで明日の朝食を準備していると、ご飯を頬張りながら不思議そうに古川くんが尋ねてくる。


「私の分は作ってないから、いいの。それに今、明日の朝ごはん支度してるから」


古川くんの家に長居するわけにはいかない。

明日も仕事があるわけだし、彼にはご飯食べてお風呂を済ませて、明日のためにゆっくり英気を養ってほしいから。


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