同僚は副社長様


「ランチと、夕ご飯だけなら」

「うん、それでいい。じゃあ、ご飯食べよ」


古川くんは有無を言わさない満面の笑みで、私の手中にあったレタスを奪い、水をはっていたボウルにつけると、私の手を引く。

どうやら、彼と一緒にご飯を食べるという新ルールは今から適応開始らしい。

ダイニングテーブルの椅子に座らされた私の前に、古川くんがよそってくれた麻婆豆腐とサラダ、白米が並べられる。


「…いただきます」


素直にご飯を食べ始めると、古川くんもまた食事を再開する。

ランチの時といい、さっきのことといい、もしかしたら古川くんは特別扱いされるのを嫌うのかな…?

ご飯を作って欲しいという依頼に対して経費も出すと言われれば、依頼主の古川くんを最優先で考えての行動だったが、どれも古川くんにとっては不要な気遣いだったのかもしれない。

これ以上、彼の意思と齟齬を生むような行動は慎まなければ、と麻婆豆腐を口に頬張った時だった。



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