同僚は副社長様



「これ以上、美都に負担をかけたくはないんだけど、一つまた頼み事してもいいかな」

「え?うん…私にできること?」

「ああ。美都にしか、できないことなんだ」


私にしか?

いつになく真剣な表情をしている古川くんと目が合い、お箸を置いた。

よっぽど重大なことなのだろうか。


「仕事関係?」

「まぁ、近くも遠くもない。でも、残業代はつけられない」


なんだか含みのある言い方に引っ掛かりを覚える。

だって、古川くんはいつだって言葉を濁したりしない、物事ははっきり言うタイプの人間だからだ。


「で、どんな頼み事なの?」

「古川グループの創立記念パーティーに出席してほしい」


古川グループ…

会社の創立記念パーティーが来週予定されていることは知っている。

もちろん、私も副社長の秘書として出席することになっているのだが、もしかして古川くんは私が同行することを知らない?


「創立記念パーティーの件なら聞いてるよ。もちろん私も、秘書として同行するから安心して」

「そうじゃないんだ」

「え?」

「美都には秘書としてはもちろんだけど、俺の…婚約者として、同席して欲しい」


こ、んやくしゃ…?

古川くんの言葉の意味を理解するのに、数秒はかかった。



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