さすれば恋となる
風磨君に指定されたのは秋の深まる銀杏木。
倉庫前。
誰も来ないからと。
「 風磨君、お待たせ 」
風磨君の笑顔はすぐに消えた。
だからか、不安になった……
「 緋衣呂の事、聞いて知ってるよね 」
短命…… の事。
「 俺ん家は池沢家に代々… 」
「 わかってる! でも、緋衣呂君のその話はしたくない… 」
「 聞いて詩乃ちゃん、池沢家の双子はいつ、どんな形で亡くなるかはわからないんだ。
事故だったり病気、突然だったり…… 」
やめて… 言わないでっ……
「 詩乃ちゃんにはそれを理解した上で緋衣呂と向き合って付き合ってほしいんだ 」
「 だったら教えて…… 」
“残して行くのと、残されるのではどっちが幸せなの?”
聞いて風磨からの答えは… 無言。
私にはどちらも苦痛。
悲しみという、深い苦痛。
「 泣かないで詩乃ちゃん…… ごめん 」
「 泣いてない! 勝手に出てくるの、寒いから…… でも、泣きたいのは私より緋衣呂君なんでしょ、だから風磨君が私に… 」
「 詩乃ちゃんっ… 」
涙が流れてしまう私に、風磨君が抱きしめてきた。
その腕は強くて、震えてるみたいだった。
きっと、風磨君は緋衣呂君が好き。
大切な友達だから……
失うのをわかってるから、苦しいんだよね。