Dear Hero
===
中学3年生の冬。
マネージャーの紺野を含め仲の良かった俺たち空手部は、夏に部活を引退した後もたまに部活に遊びに行ったり、みんなで受験勉強したりとよくつるんでいた。
俺はというと、引退してから鈍った体を動かしに、小学校卒業と共にやめた紺野の家の道場にもまた通うようになっていた。
同じ方向に向かうのだから当然と言っちゃ当然だけど、部内でも人気者の紺野と、誰からも文句言われる事のないちゃんとした理由の下に一緒に歩く事ができるのが、当時の俺のひそかな楽しみだった。
『紺野はみんなのアイドル。勝手に告るべからず』
これが空手部男子の暗黙のルール。
抜け駆けは許されず、想いを伝える事はできなかったけど、逆に言えば他の奴らに先越される事もないなんて、ちょっと安心してたんだよな。
だからこそ、ちょっと他の部員に差をつけられるあの時間が幸せだったんだ。
『ダイくんはさ、女の子は髪が長いのと短いの、どっちが好き?』
一気に気温が下がり冬の気候となった頃、いつもの帰り道に唐突に紺野が聞いてきた。
『…なに、唐突に』
『ええと…クラスの友達と話しててそんな話題があったから…かな』
『ふうん…まぁしいて言えば長い髪かなぁ。男じゃできない髪型だし、女の子っぽいし』
『……そう、なんだ』
マフラーで耳元まですっぽり隠すと、ぽつりと呟く。
『髪、伸ばそうかなぁ』
『なんで?お前短いの似合ってんじゃん』
『だって女の子らしくなりたいもん』
そんな事を言っていたなとふと思い出し、12月の紺野の誕生日にヘアピンをプレゼントした。
紺野の笑顔のような、オレンジ色の花飾りがついたヘアピン。
中学生が買うものだから、大したものじゃなくて安物だったけど、すごく喜んでくれて、俺が覚えている限りではあの日までは、ずっとつけてくれていた。
—————そして、あの日の事件は突然やってくる。
中学3年生の冬。
マネージャーの紺野を含め仲の良かった俺たち空手部は、夏に部活を引退した後もたまに部活に遊びに行ったり、みんなで受験勉強したりとよくつるんでいた。
俺はというと、引退してから鈍った体を動かしに、小学校卒業と共にやめた紺野の家の道場にもまた通うようになっていた。
同じ方向に向かうのだから当然と言っちゃ当然だけど、部内でも人気者の紺野と、誰からも文句言われる事のないちゃんとした理由の下に一緒に歩く事ができるのが、当時の俺のひそかな楽しみだった。
『紺野はみんなのアイドル。勝手に告るべからず』
これが空手部男子の暗黙のルール。
抜け駆けは許されず、想いを伝える事はできなかったけど、逆に言えば他の奴らに先越される事もないなんて、ちょっと安心してたんだよな。
だからこそ、ちょっと他の部員に差をつけられるあの時間が幸せだったんだ。
『ダイくんはさ、女の子は髪が長いのと短いの、どっちが好き?』
一気に気温が下がり冬の気候となった頃、いつもの帰り道に唐突に紺野が聞いてきた。
『…なに、唐突に』
『ええと…クラスの友達と話しててそんな話題があったから…かな』
『ふうん…まぁしいて言えば長い髪かなぁ。男じゃできない髪型だし、女の子っぽいし』
『……そう、なんだ』
マフラーで耳元まですっぽり隠すと、ぽつりと呟く。
『髪、伸ばそうかなぁ』
『なんで?お前短いの似合ってんじゃん』
『だって女の子らしくなりたいもん』
そんな事を言っていたなとふと思い出し、12月の紺野の誕生日にヘアピンをプレゼントした。
紺野の笑顔のような、オレンジ色の花飾りがついたヘアピン。
中学生が買うものだから、大したものじゃなくて安物だったけど、すごく喜んでくれて、俺が覚えている限りではあの日までは、ずっとつけてくれていた。
—————そして、あの日の事件は突然やってくる。