Dear Hero
二学期もあと数日で終わりという頃。
学校帰りに哲ちゃんとファストフード店へ寄って、受験勉強をしていた。
哲ちゃんとは、同じ学校に行くと分かってからは、お互いない頭をフル回転して一緒に勉強する事が多かった。
『あれ、紺野じゃね?』
哲ちゃんの声に、窓に背を向けていた俺が折り返ると、窓の外を足早に歩く紺野。
まだ19時前だというのに、外はもう真っ暗だった。
哲ちゃんは空手部じゃなくてテニス部だったけど、一緒に帰っていたから部活帰りによく空手部にも顔を出していて、部員ともすっかり馴染んでいた。
もちろん、紺野とも。
『紺野、数学得意じゃなかったっけ。教えてくんねーかな』
『そうなの?教えてもらう?』
『大護、呼んできてよ』
『別に哲ちゃんも仲いいじゃん』
『やだよ、恥ずかしーじゃん』
哲ちゃんが頭良くないのは、紺野も知ってるのになぁと思いつつ、入り口に向かう。
『紺野!』
『ダイくん。どうしたの?こんな所で』
『哲ちゃんと勉強してた。お前もだいぶ帰り遅いじゃん』
『私も学校で友達と勉強してたの。なんだか受験生っぽいね』
『受験生だろ』
耳元についているオレンジのヘアピンみたいに笑う。
今日もつけてくれているのだと知って、嬉しくなった。
『哲ちゃんがさ、紺野数学得意だから教えてほしいって言うんだけどさ、この後空いてる?もちろん送るし』
店の中の哲ちゃんを指さすと、テーブルに肘をついてどこかを見ていた。
こっちに気づいてるけど、あえて知らない振りしてるんだろうなって思った。
『あーごめんね、この後塾なんだ。また今度でよかったら』
『そっか、引き留めて悪ぃ』
『ううん、こっちこそごめんね。じゃあ…』
“ううん”と首を振ったところで、ヘアピンがスルリと髪から落ち、アスファルトの上に小さく跳ねて転がった。
『やだ!ごめんなさい!』
慌ててしゃがんで拾おうとするも、手がかじかんでいるのかうまく拾えない紺野。
同じようにしゃがんで手を伸ばしたら、簡単に拾えたので手渡すと申し訳なさそうに「ありがとう」と言った。
『やだなぁ…落ちるなんてなんか縁起悪い』
『こんなピンにそんな力ねぇよ』
『だといいけど』
『…だいぶ暗いけど、送らなくて大丈夫か?』
『テツくんといるんでしょ?大丈夫だよ!私、強いから!』
力強いガッツポーズをすると、“じゃあね”と小走りで帰っていった。
“私、強いから”
この言葉に何の疑問も持たず、安心してしまっていたんだ。
紺野だって、普通の女の子だったのに。
学校帰りに哲ちゃんとファストフード店へ寄って、受験勉強をしていた。
哲ちゃんとは、同じ学校に行くと分かってからは、お互いない頭をフル回転して一緒に勉強する事が多かった。
『あれ、紺野じゃね?』
哲ちゃんの声に、窓に背を向けていた俺が折り返ると、窓の外を足早に歩く紺野。
まだ19時前だというのに、外はもう真っ暗だった。
哲ちゃんは空手部じゃなくてテニス部だったけど、一緒に帰っていたから部活帰りによく空手部にも顔を出していて、部員ともすっかり馴染んでいた。
もちろん、紺野とも。
『紺野、数学得意じゃなかったっけ。教えてくんねーかな』
『そうなの?教えてもらう?』
『大護、呼んできてよ』
『別に哲ちゃんも仲いいじゃん』
『やだよ、恥ずかしーじゃん』
哲ちゃんが頭良くないのは、紺野も知ってるのになぁと思いつつ、入り口に向かう。
『紺野!』
『ダイくん。どうしたの?こんな所で』
『哲ちゃんと勉強してた。お前もだいぶ帰り遅いじゃん』
『私も学校で友達と勉強してたの。なんだか受験生っぽいね』
『受験生だろ』
耳元についているオレンジのヘアピンみたいに笑う。
今日もつけてくれているのだと知って、嬉しくなった。
『哲ちゃんがさ、紺野数学得意だから教えてほしいって言うんだけどさ、この後空いてる?もちろん送るし』
店の中の哲ちゃんを指さすと、テーブルに肘をついてどこかを見ていた。
こっちに気づいてるけど、あえて知らない振りしてるんだろうなって思った。
『あーごめんね、この後塾なんだ。また今度でよかったら』
『そっか、引き留めて悪ぃ』
『ううん、こっちこそごめんね。じゃあ…』
“ううん”と首を振ったところで、ヘアピンがスルリと髪から落ち、アスファルトの上に小さく跳ねて転がった。
『やだ!ごめんなさい!』
慌ててしゃがんで拾おうとするも、手がかじかんでいるのかうまく拾えない紺野。
同じようにしゃがんで手を伸ばしたら、簡単に拾えたので手渡すと申し訳なさそうに「ありがとう」と言った。
『やだなぁ…落ちるなんてなんか縁起悪い』
『こんなピンにそんな力ねぇよ』
『だといいけど』
『…だいぶ暗いけど、送らなくて大丈夫か?』
『テツくんといるんでしょ?大丈夫だよ!私、強いから!』
力強いガッツポーズをすると、“じゃあね”と小走りで帰っていった。
“私、強いから”
この言葉に何の疑問も持たず、安心してしまっていたんだ。
紺野だって、普通の女の子だったのに。