Dear Hero
コートも着ずに外へ出たので、店内の暖かさが心地よかった。
紺野は今日は無理だってと伝えると、ほっとした様子の哲ちゃん。
だったらなぜ呼ぼうとした。



ポテトをつまみながらやっていたとはいえ、そろそろお腹も減ってきたし帰ろうかと片付け始める。
ペンケースにしまおうとしたシャーペンが手からすり抜け、テーブルの下にカシャンと落ちた。


“やだなぁ…落ちるなんてなんか縁起悪い”

“私、強いから”


紺野の言葉を思い出し、よくわからないけどなんだか胸騒ぎがした。


『どうした?大護。シャーペン落ち…』
『ごめん、哲ちゃん。帰る』
『へ?っておい大護!カバンとコート!』


哲ちゃんの叫ぶ声も聞かずに、店の外に出て紺野を追いかける。
帰宅中のOLやサラリーマンがたくさんで、なかなか思うように進めない。
吹き付ける風が冷たくて痛い。
あぁ、コート着てくるの忘れたな。
でも取りに戻る時間さえ惜しかった。


繁華街を抜けて、少しずつ人の数がまばらになっていく。
角を曲がると、紺野らしき後ろ姿を見つけた。
周りに、何人かの人がいる?


足を止めずに近づいていくと、紺野の他に4、5人の男たち。
紺野の知り合いなのだろうか。
遠くて何を話しているのかはわからない。


楽しそうに話す男たちと、いつもより声のトーンが低い紺野。
あまりいい状況ではない事はすぐにわかった。
< 103 / 323 >

この作品をシェア

pagetop