Dear Hero
玄関を出ると、樹さんが車で迎えに来てくれていた。
助手席に乗り込むと、車を発進させる。
“車が運転できる”というそれだけで、ステータスが高いなぁなんて思った。
「大護くん、本当に大丈夫?……引き返すなら今だけど…」
「大丈夫…です。覚悟はできてるんで」
「……わかった」
会話らしい会話もなく、車を停めたのは依のマンション。
玄関の前に立つと、インターホンを鳴らす。
樹さんは鍵を持っているのだけど、「もし俺が持ってるって知ったら、鍵変えちゃうといけないしね」との事で、あえてのインターホンらしい。
前回と同じく、受話器が取られる前に扉が開いた。
「樹。……とまたキミか。何の用?」
「別に用事がなくても、大事な姪の様子見に来るくらいは別にいいだろ」
「……樹はいいとしてその子、また乱暴されたら嫌よ」
「そこはちゃんと俺が見とくって」
「………」
不満そうな顔はしていたものの、家には上げてくれた。
第一関門、突破だ。
変わり果てたリビングを見ても一切動じない樹さんは、どさりとソファに腰を下ろすと「何このカーテン。ダッサ」と言ってのけた。
いいぞ、もっと言ってやれ。
「お茶はいいからな。客じゃないんだし」
キッチンで食器をカチャカチャいわせていた依の手を止めさせると、こちらへ手招きする。
「依。俺、姉貴と話す事あるから、大護くんと自分の部屋行ってな」
「何よ。私はあんたと話す事なんてないわ」
「俺があんの。姉貴が依を独り占めするもんだからさぁ、二人だって久しぶりに積もる話もあるだろ?…大護くん、行って」
「…依、行こう」
依の手を引くと、母親に承諾を得るかのような目線を送る。
こんな事ですら自由はないのだろうか。
「……依に手を出すんじゃないわよ」
「出しませんよ。こんな所で」
できる限り冷静に一瞥すると、リビングから繋がるドアを開けて依の部屋へ入る。
掃除の時に入った事はあったけど、こうやって二人きりになるのは初めてかもしれない。
立ち尽くしたままの依を、ベッドに座らせる。
キレイにメイキングされたまま使われた形跡のないベッドを見て、きっと今は母親と寝ているんだろうなと思った。
助手席に乗り込むと、車を発進させる。
“車が運転できる”というそれだけで、ステータスが高いなぁなんて思った。
「大護くん、本当に大丈夫?……引き返すなら今だけど…」
「大丈夫…です。覚悟はできてるんで」
「……わかった」
会話らしい会話もなく、車を停めたのは依のマンション。
玄関の前に立つと、インターホンを鳴らす。
樹さんは鍵を持っているのだけど、「もし俺が持ってるって知ったら、鍵変えちゃうといけないしね」との事で、あえてのインターホンらしい。
前回と同じく、受話器が取られる前に扉が開いた。
「樹。……とまたキミか。何の用?」
「別に用事がなくても、大事な姪の様子見に来るくらいは別にいいだろ」
「……樹はいいとしてその子、また乱暴されたら嫌よ」
「そこはちゃんと俺が見とくって」
「………」
不満そうな顔はしていたものの、家には上げてくれた。
第一関門、突破だ。
変わり果てたリビングを見ても一切動じない樹さんは、どさりとソファに腰を下ろすと「何このカーテン。ダッサ」と言ってのけた。
いいぞ、もっと言ってやれ。
「お茶はいいからな。客じゃないんだし」
キッチンで食器をカチャカチャいわせていた依の手を止めさせると、こちらへ手招きする。
「依。俺、姉貴と話す事あるから、大護くんと自分の部屋行ってな」
「何よ。私はあんたと話す事なんてないわ」
「俺があんの。姉貴が依を独り占めするもんだからさぁ、二人だって久しぶりに積もる話もあるだろ?…大護くん、行って」
「…依、行こう」
依の手を引くと、母親に承諾を得るかのような目線を送る。
こんな事ですら自由はないのだろうか。
「……依に手を出すんじゃないわよ」
「出しませんよ。こんな所で」
できる限り冷静に一瞥すると、リビングから繋がるドアを開けて依の部屋へ入る。
掃除の時に入った事はあったけど、こうやって二人きりになるのは初めてかもしれない。
立ち尽くしたままの依を、ベッドに座らせる。
キレイにメイキングされたまま使われた形跡のないベッドを見て、きっと今は母親と寝ているんだろうなと思った。