Dear Hero
項垂れる気配を感じて起き上がると、恨みがましく依の両頬をつねってやる。

「いはいれす……」
「知るか」

あまりにも困った顔をするもんだから、つねるのはやめた。
代わりに、もちもちとした頬を手の中で転がすように遊ぶ。

「……大護くん」
「なに」

頬をつぶされてタコのようになった口がもごもごと動く。

「もう一度聞きたいです…」
「何を」
「す…好きって……」
「言わない。もう言ってやんねぇ」
「……ずるい」
「俺をほったらかしにした仕返しだ」

この嬉しさが隠せなくて、いじわるしてしまう。
両手に感じる頬の柔らかさ。
依が、また俺の腕の中にいる幸せ。
信じられないくらいだ。



「………」
「……大護くん?」



頬に触れたまま、黙り込む俺を覗き込む。


「なぁ依」
「?」
「誕生日の時に伝えてくれた俺への気持ち、まだ変わってない?」
「…!変わりません!大護くんへの気持ちは…ずっと変わっていません…!」
「……そっか」
「私は…大護くんが大好き…」

頬に触れる俺の手にそっと自分の手を重ねると、俺の大好きなはにかんだ笑顔の花を咲かせた。



「俺…ずっと隣で依の笑顔を護りたい。お前を一人にさせたくない」
「……」
「でも、まだ17歳だしガキだし全然大人じゃないから、今すぐは自信ない」
「……」
「俺がもう少し大人になって、もっと色んな力つけて自信つけて」
「………」
「…その時、依もまだ同じ気持ちでいてくれたら」
「………」
「家族になろう」
「………っ」



みるみるうちに依の瞳には涙が溢れて、頬を伝っていく。
震える唇で「はい…」と絞り出すと、俺の胸に顔をうずめた。
俺の腕の中にいる女の子が、愛しくて愛しくてたまらない。


「ははっ。……めちゃくちゃ嬉しい」
「私…だって……」
「ねぇ依、こっち向いて」
「?……っ」



耳元に手を添えると、潤んだ唇にそっと触れる。




初めてのキスは、マシュマロより柔らかくて温かい、涙の味だった。
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