Dear Hero
依の温もりを実感するように、閉じていた目をそっと開く。
視界に入るのは、手すりの向こう側からこちらを向いているスーツの裾と革靴。
足の先から辿るように目線を上げていくと、そこにいたのは—————


「どうやら、仲直りしたみたいだね」


手すりに肘をつきにこにことこちらを見ているおじさんだった。
サーッと血の気が引く音がする。
ぞくっと悪寒が走った気がして後ろを振り向くと、笑顔で立っている樹さん。


「……仲のよろしいようで」


笑顔だけどなんか殺気立ってる。
笑顔だから余計怖い。
思わず依から離れて直立した。


「……いつ…から…」
「“傷ついた”とか言ってる辺りから」


ほとんど最初からじゃねぇか…!
勝手に依がいなくなるなんて勘違いしてただけでもくそ恥ずかしいのに、それを見られてるって何これ、何プレイだなんだこれ。


ていうか俺……彼女の父親と叔父さんの前でチューしたぞ…。
しかも2回。
つーか、こんなめちゃくちゃ人いる所で何やってんだ俺。
浮かれた頭が急激に冷えて冷静になり、だらだらと変な汗が噴き出してくる。


「あぁ、大護くん。私は構わないよ。キスもハグも挨拶のうちだからね」


変にフォローしないで……!
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