Dear Hero
「大護くん」

賑やかな言い争いの中、朗らかだった雰囲気が変わったのに気づいて、おじさんの方へ向き直す。


「本当に君を振り回してばかりですまない。私が近くにいてやれない分、依の事を頼むよ」
「……はい」


“大事にします”とか“任せてください”とか、言うべきだったのだろう。
でも、口では何とでも言えるけど、実際には自分の力じゃ依を護りきれない事もあるってもわかったから。
今は、返事をするだけで精いっぱいだった。



「そうだ、依の代わりに妻を連れていく事にしたんだ」
「え……」
「私が妻を野放しにしていたのが原因だからね。責任持って妻を繋ぎ止めておくよ」


正直、ほっとした。
どうもがいても、あの人にだけは勝てないと思っていたから。


「そして、依。大護くんのご家族の言いつけはちゃんと守るんだよ」
「うん……」
「何かあればいつでも連絡しなさい。遠慮する事はない。こちらに来たいというのなら歓迎するよ。連絡先は教えたね?」
「…うん」
「依は一人じゃない。私たちも遠くから依の事を見守っているし、樹くんも大護くんもいる」
「……うん」
「お前の幸せを、心から願っているよ」
「………っパパぁ!」


手すり越しにおじさんに抱きついた依は、ぎゅっと抱き締められると「ありがとう」とこぼした。

「さぁ…そろそろ搭乗しないと」
「パパ、わがまま言ってごめんなさい。気をつけて行ってね」
「向こうに着いたら連絡するよ。……ママにも会っていくかい?」

おじさんからそっと離れると、静かに首を振った。

「ママにもごめんねって伝えて。パパもママも、元気でね」
「あぁ、依も」


最後に依の頭を優しく撫でると、おじさんは飛行機に乗り込んでいった。
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