Dear Hero
行くのを怖がっていた学校には、一緒に行った。
不安そうな顔をしていたので、手を握って教室に入ったら一番に飛んできたのは例の女子。
「心配してたんだよおぉ」と泣き出す女子につられて、「ご心配おかけしましたぁ」と泣き合う姿がおかしかった。

繋いだ手を見て、「なんだ、やっぱり依ちゃんと付き合ってるんじゃん」なんてニンマリ笑う女子に「そうだよ」と答えたら、ラリアットの如く哲ちゃんに首を引っかけられ「ついにか!おめでとう!!」とハグされた。
哲ちゃんからのハグは嬉しくない。
孝介が「大護も頑張ったな」なんて言ってくれるから、恥ずかしいけど「二人とも、ありがとな」と伝えたら、孝介が珍しく顔をくしゃくしゃにして喜んでくれた。

1限目が終わった休み時間には、隣のクラスから紺野が飛び込んできて、内緒話のようにお互い耳打ちしてはキャーッと黄色い声を上げて抱きついていた。
紺野に紛れて「俺も待ってたぞ水嶋ァ!」と抱きつこうとした哲ちゃんには、俺と紺野からの鉄拳がお見舞いされた。


オールセーフと思っていた期末テストは、英語だけが赤点だった。
依と一緒に補講にも出て、なぜか授業に出ていなかったはずの依に教えてもらうという珍現象が発生して、担任に爆笑された。
いつも俺より哲ちゃんの方が赤点が多いのに、今回は一つもなかったのを「これが…愛の力だな…」とかキザな顔して言うから、紺野と撮ったというプリクラの哲ちゃんの眉毛をこっそりペンで繋いでおいた。



これで、みんな揃って3年生になれるんだ。

毎日のようにバカやって、
くだらない事で笑いあって、
その日が楽しければそれでいい。

そんな日常が送れたらいいやなんて思っていたのに。


“みんな揃って進級する”


そんなごく当たり前の事が幸せに感じるなんて思ってもみなかった。
残り数日でもいい。
一度しかない高校2年生という時間を、依のいる教室で終わる事ができて俺は本当に幸せだと思う。
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