Dear Hero
いつだったか、紺野を突き放してしまった時の事を思い出す。
その時みたいな不安げな顔。
こんな事で気分が落ちてるなんて、言いたくないのに。
「紺野は何も悪くないよ。俺が勝手にテンション落としただけ」
「……言ってくれないんだ」
「………」
「少しでも、テツくんの事知りたいって思ってたのに」
「……っ」
「言ってくれないなら帰る。こんな状態で勉強なんかできな……」
俺の服から手を離して、階段へと回れ右する紺野の腕を掴む。
哀しそうにこちらを見る紺野。
「帰んないで」
「……」
「すっげぇしょうもない理由だから、言いたくない」
「……」
「言いたくないけど、紺野に帰って欲しくないから言う」
「……」
「笑うなよ」
「……うん」
「………もちが」
「もちくんが」
「俺より先に……紺野にキスしたから」
「………っ」
哀しそうに俺を見つめていた眼が、大きく揺れる。
俺に掴まれたままの左手のせいで、逃げる事もできない。
「……ね。しょうもないだろ」
「………」
「自分ちの犬にまでヤキモチ焼いてんの」
表情を隠すように、前を向いてしまった。
掴んだ手だけが、二人を繋いでいる。
その時みたいな不安げな顔。
こんな事で気分が落ちてるなんて、言いたくないのに。
「紺野は何も悪くないよ。俺が勝手にテンション落としただけ」
「……言ってくれないんだ」
「………」
「少しでも、テツくんの事知りたいって思ってたのに」
「……っ」
「言ってくれないなら帰る。こんな状態で勉強なんかできな……」
俺の服から手を離して、階段へと回れ右する紺野の腕を掴む。
哀しそうにこちらを見る紺野。
「帰んないで」
「……」
「すっげぇしょうもない理由だから、言いたくない」
「……」
「言いたくないけど、紺野に帰って欲しくないから言う」
「……」
「笑うなよ」
「……うん」
「………もちが」
「もちくんが」
「俺より先に……紺野にキスしたから」
「………っ」
哀しそうに俺を見つめていた眼が、大きく揺れる。
俺に掴まれたままの左手のせいで、逃げる事もできない。
「……ね。しょうもないだろ」
「………」
「自分ちの犬にまでヤキモチ焼いてんの」
表情を隠すように、前を向いてしまった。
掴んだ手だけが、二人を繋いでいる。