Dear Hero
「……そんなじろじろ見ないでよ」

ドアの隙間から声をかけられた紺野は、ぎょっとしたようにこちらを見た。
飲み物を持って部屋に戻ると、紺野は興味深そうに本棚を物色していた。

「び…っくりした……」
「紺野の真似」
「…っ私そんな言い方してる!?」
「してるしてる。今日も言ってたよ」

今日会ってからの会話を思い出しているのか、難しそうな顔をする。


「あんま部屋の中見られると恥ずかしいんだけど」
「ごめん、男の子の部屋って弟のくらいしか見た事ないから…」
「大護ん家は?」
「ごちそうになった事はあるけど、ダイくんの部屋まで行った事はないよ」
「ふーん……」

大護も知らない紺野の初めてをもらって、心の中でガッツポーズをする。


「思ってたより片付いててキレイなんだなぁって。ちょっと意外」
「よく言われる。掃除好きなの、俺」
「意外」
「もう一つ、意外って言われる事を教えると」
「教えると」
「料理する」
「意外……!」
「うち、おふくろが仕事で帰り遅かったり休日もいない事多くてさ。昔は一番上の兄貴がご飯とか作ってくれてたんだけど、結婚して家出ちゃってからは自分で作ったりしてる」
「……女子力高くない…?」
「女子力はいらないけど……。家庭的でしょ」

ドヤとばかりにチラリと見ると、口を尖らせて眉間にシワを寄せている。

「なんか……ずるい」
「なんだよ、ずるいって」
「………」

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