Dear Hero
「今日はどこに行くの?」
電車の中で、俺の耳元で紺野が囁く。
満員の電車の中で紺野が押し潰されてしまわないように、ドアと俺で挟み込むように立つ。
人が増える度にどんどん後ろから押されてしまって、今や紺野との距離は数cmしかない。
「俺の好きな所」
「どこ?」
「水族館」
「水族館!」
「俺の好きなもの、知って欲しくて」
「そっか」
「水族館、好き?」
「好き!久しぶりだぁ」
にこにこと嬉しそうに笑う紺野。
「俺も、久しぶり」
人ごみの中でもみくちゃになるうちに、繋いだ手は離れてしまった。
それなのに、しばらくしたら治まるだろうと思っていたドキドキは、一時間近く経っても治まらない。
こんな状態で一日いたら、俺の心臓はバテてしまうんじゃないだろうか。
水族館に着いて入館する。
再入館用のスタンプを、手の甲に押してもらった。
この中にいる人たち、みんなについているものなのに、紺野とお揃いな気がして嬉しくなった。
「どうして水族館が好きなの?」
入館ゲートから一番近いイルカの水槽の前で、こちらを見ないまま紺野が訊ねる。
「小さい時見てたアニメの影響、かな。シャチに憧れて、親に初めて連れてきてもらった水族館で色んな海獣を知って。海の中をゆったり泳いでる姿を見てると、落ち着くんだ」
「それ、私も見てたかも」
「お、同士。シャチと一緒に広い海を泳ぐ姿に憧れてた」
「ちょっと、わかるかも」
「ここにはシャチ、いないけどな」
太陽に照らされた水面の影が、俺たちのいるフロアまで包み込む。
ゆらゆらと揺れて、自分まで水の中にいるみたい。
いつまでも、ずっとここにいられる気さえする。
繋ぎ直した左手はまだ熱を持ったままなのに、心は落ち着きを取り戻してきた。
電車の中で、俺の耳元で紺野が囁く。
満員の電車の中で紺野が押し潰されてしまわないように、ドアと俺で挟み込むように立つ。
人が増える度にどんどん後ろから押されてしまって、今や紺野との距離は数cmしかない。
「俺の好きな所」
「どこ?」
「水族館」
「水族館!」
「俺の好きなもの、知って欲しくて」
「そっか」
「水族館、好き?」
「好き!久しぶりだぁ」
にこにこと嬉しそうに笑う紺野。
「俺も、久しぶり」
人ごみの中でもみくちゃになるうちに、繋いだ手は離れてしまった。
それなのに、しばらくしたら治まるだろうと思っていたドキドキは、一時間近く経っても治まらない。
こんな状態で一日いたら、俺の心臓はバテてしまうんじゃないだろうか。
水族館に着いて入館する。
再入館用のスタンプを、手の甲に押してもらった。
この中にいる人たち、みんなについているものなのに、紺野とお揃いな気がして嬉しくなった。
「どうして水族館が好きなの?」
入館ゲートから一番近いイルカの水槽の前で、こちらを見ないまま紺野が訊ねる。
「小さい時見てたアニメの影響、かな。シャチに憧れて、親に初めて連れてきてもらった水族館で色んな海獣を知って。海の中をゆったり泳いでる姿を見てると、落ち着くんだ」
「それ、私も見てたかも」
「お、同士。シャチと一緒に広い海を泳ぐ姿に憧れてた」
「ちょっと、わかるかも」
「ここにはシャチ、いないけどな」
太陽に照らされた水面の影が、俺たちのいるフロアまで包み込む。
ゆらゆらと揺れて、自分まで水の中にいるみたい。
いつまでも、ずっとここにいられる気さえする。
繋ぎ直した左手はまだ熱を持ったままなのに、心は落ち着きを取り戻してきた。