Dear Hero
「…わっ」
水槽の前に駆け寄ってきた子どもにぶつかって、紺野がよろけた。
咄嗟に抱き止めると、至近距離で目と目が合う。
「……大丈夫?」
「うん……ありがと」
逸らした目線に釣られるように、紺野の目線も断ち切られる。
……危なかった。
思わずキス、しそうになった。
こんな人の多い所で?
まだ紺野からの返事はもらってないのに?
必死に留める理由を探した。
下心なんかは知られちゃいけない。
平常心を取り戻すために、大きく深呼吸をする。
「次、見に行く?」
何事もなかったかのように声をかけると、やっぱり何事もなかったかのように「うん」と返ってきた。
今日は、手を繋げただけでもラッキーなんだ。
欲は出しちゃダメだ。
サンゴ礁の水槽では、パネルに描かれた熱帯魚を一生懸命探していた。
タコの水槽を見ながら「美味しそう」と呟いたのにはぎょっとした。
その後にタコ焼き食ってたのにはもっと驚いた。
赤ちゃんウミガメの水槽では、しきりに「かわいい、連れて帰りたい」と連発してはしゃいでた。
深海魚のコーナーでデッカイ魚の顔真似をしたら、似てると大爆笑された。
ペンギンコーナーに貼りついて離れない紺野を、20分くらい待っていた。
楽しそうに笑う紺野を見るのが嬉しくて、俺まで笑顔になっていた。
「あ、そろそろ時間だ」
「イルカショー?」
「うん。見るだろ?」
「見たい!」
屋外にあるスタジアムに移動すると、半分くらいの席が埋まり始めていた。
階段が多くて足場の悪い客席。
危なくないように、繋いだままの手でエスコートすると「なんだかお姫様になったみたい」と微笑んだ。
「……っくしょい!」
「オヤジみたいなくしゃみだな」
「うるさい!」
席に座ってショーまでの時間を待つ紺野がくしゃみをする。
繋いでいない方の手でパシンと叩かれた。
なんだか、威力が前よりちょっと弱くなった気がする。
「寒い?」
「んー、ちょっとね。でもショー始まっちゃえばたぶん気にならなくなるし」
「でもまだ始まるまで時間あるだろ。なんか温かいもの買ってくるか?」
「ううん、いいよ。体の中は温かいから」
紺野の言っている意味が分からなかった。
カイロでも貼ってるのかな。
水槽の前に駆け寄ってきた子どもにぶつかって、紺野がよろけた。
咄嗟に抱き止めると、至近距離で目と目が合う。
「……大丈夫?」
「うん……ありがと」
逸らした目線に釣られるように、紺野の目線も断ち切られる。
……危なかった。
思わずキス、しそうになった。
こんな人の多い所で?
まだ紺野からの返事はもらってないのに?
必死に留める理由を探した。
下心なんかは知られちゃいけない。
平常心を取り戻すために、大きく深呼吸をする。
「次、見に行く?」
何事もなかったかのように声をかけると、やっぱり何事もなかったかのように「うん」と返ってきた。
今日は、手を繋げただけでもラッキーなんだ。
欲は出しちゃダメだ。
サンゴ礁の水槽では、パネルに描かれた熱帯魚を一生懸命探していた。
タコの水槽を見ながら「美味しそう」と呟いたのにはぎょっとした。
その後にタコ焼き食ってたのにはもっと驚いた。
赤ちゃんウミガメの水槽では、しきりに「かわいい、連れて帰りたい」と連発してはしゃいでた。
深海魚のコーナーでデッカイ魚の顔真似をしたら、似てると大爆笑された。
ペンギンコーナーに貼りついて離れない紺野を、20分くらい待っていた。
楽しそうに笑う紺野を見るのが嬉しくて、俺まで笑顔になっていた。
「あ、そろそろ時間だ」
「イルカショー?」
「うん。見るだろ?」
「見たい!」
屋外にあるスタジアムに移動すると、半分くらいの席が埋まり始めていた。
階段が多くて足場の悪い客席。
危なくないように、繋いだままの手でエスコートすると「なんだかお姫様になったみたい」と微笑んだ。
「……っくしょい!」
「オヤジみたいなくしゃみだな」
「うるさい!」
席に座ってショーまでの時間を待つ紺野がくしゃみをする。
繋いでいない方の手でパシンと叩かれた。
なんだか、威力が前よりちょっと弱くなった気がする。
「寒い?」
「んー、ちょっとね。でもショー始まっちゃえばたぶん気にならなくなるし」
「でもまだ始まるまで時間あるだろ。なんか温かいもの買ってくるか?」
「ううん、いいよ。体の中は温かいから」
紺野の言っている意味が分からなかった。
カイロでも貼ってるのかな。