Dear Hero
とはいえ、海の近くの水族館だ。
海風も強くて体感気温は地元にいた時よりもぐっと低い。
寒そうにしている紺野を、そのままにしておくわけにはいかない。
着ていたパーカーを脱ぐと、羽織らせた。
「え、いいよ、テツくんが寒くなっちゃう」
「俺は寒さには強いからいいの。せっかくオシャレして来てくれたのに、それで風邪ひかれたら俺がイヤだ」
「………」
「着て。これで返されたら俺めっちゃ恥ずかしいんだけど」
「…じゃあ、ありがたく借ります」
申し訳なさそうにパーカーに袖を通すと、すぐに「暖かい」と顔を綻ばせた。
「……テツくん、やっぱり男の子なんだね」
「いきなり何?俺は昔から男だよ?」
きょとんとする俺に、「それはそうなんだけど」と苦笑する。
「テツくん、そんなに体格もガッシリしてる訳じゃないし、身長も私とそんなに大きく開いてる方じゃないと思ってたけど、こんなに服大きいんだなって」
指先まで届く俺のパーカーの袖を、「ほら」と見せる。
「今日、ずっと手を繋いでて思ったけど、手もゴツゴツしてて大きくて。私の手なんて簡単に包み込まれちゃう」
「………」
「電車の中でも、私が潰されないように支えていてくれてたでしょ」
「………」
「ここに来てからも、私が危なくないように抱き止めてくれたり、エスコートしてくれたり、私の体調心配してくれたり」
「………」
「護られてるなって思ったの」
「……っ」
「私……っ」
紺野が続きを声に出す前に、賑やかなBGMが鳴り出した。
ステージの中央に、トレーナーたちが手を振りながら出てくる。
ショーが、始まる。
「…ありがと、紺野」
「……っ」
「続きもすげぇ気になるけど、始まっちゃったな」
「うん……」
「後で、続き聞かせて」
BGMにかき消されないように耳元で囁くと、小さく身体を震わせて声もなく頷いた。
強く握られた左手が、俺をショーに集中させてくれなかった。
海風も強くて体感気温は地元にいた時よりもぐっと低い。
寒そうにしている紺野を、そのままにしておくわけにはいかない。
着ていたパーカーを脱ぐと、羽織らせた。
「え、いいよ、テツくんが寒くなっちゃう」
「俺は寒さには強いからいいの。せっかくオシャレして来てくれたのに、それで風邪ひかれたら俺がイヤだ」
「………」
「着て。これで返されたら俺めっちゃ恥ずかしいんだけど」
「…じゃあ、ありがたく借ります」
申し訳なさそうにパーカーに袖を通すと、すぐに「暖かい」と顔を綻ばせた。
「……テツくん、やっぱり男の子なんだね」
「いきなり何?俺は昔から男だよ?」
きょとんとする俺に、「それはそうなんだけど」と苦笑する。
「テツくん、そんなに体格もガッシリしてる訳じゃないし、身長も私とそんなに大きく開いてる方じゃないと思ってたけど、こんなに服大きいんだなって」
指先まで届く俺のパーカーの袖を、「ほら」と見せる。
「今日、ずっと手を繋いでて思ったけど、手もゴツゴツしてて大きくて。私の手なんて簡単に包み込まれちゃう」
「………」
「電車の中でも、私が潰されないように支えていてくれてたでしょ」
「………」
「ここに来てからも、私が危なくないように抱き止めてくれたり、エスコートしてくれたり、私の体調心配してくれたり」
「………」
「護られてるなって思ったの」
「……っ」
「私……っ」
紺野が続きを声に出す前に、賑やかなBGMが鳴り出した。
ステージの中央に、トレーナーたちが手を振りながら出てくる。
ショーが、始まる。
「…ありがと、紺野」
「……っ」
「続きもすげぇ気になるけど、始まっちゃったな」
「うん……」
「後で、続き聞かせて」
BGMにかき消されないように耳元で囁くと、小さく身体を震わせて声もなく頷いた。
強く握られた左手が、俺をショーに集中させてくれなかった。