Dear Hero
握られていた手を引き寄せた。
紺野の温かさを、腕の中全体に感じる。
ドクドクと早鐘のような鼓動は、もうどちらのものかわからない。


「これ……夢?」
「……夢だったら、もう一度言うよ」
「夢じゃなくても、何度でも言って欲しいんだけど」
「好き」
「………」
「テツくんの事が好き」
「………」
「大好き」
「ごめん、やっぱもういい…俺が爆発する……」
「私がやめてって言ってもやめなかったのは、どこの誰よ」
「……俺です、ごめんなさい」


項垂れるように紺野の肩に顔をうずめると、くすくすと笑う振動が伝わった。

ずっと触れたくて堪らなかった紺野なのに、いざ抱き締めてみたら夢を見ているようで全然実感が涌かない。
体温を実感したくて、抱き締める手に力を入れる。


「……でね、まだ私の話終わってないんだけど」

一瞬、心臓がヒュンと鳴る。
もしかして、この話は嘘でしたとかドッキリだったとか、俺の早とちりだったとか。
青ざめる俺の胸に手を当てて、少しだけ距離を取る紺野。
いなくなってしまうんじゃないかと不安で、背中に回した手は離せない。


「私からのお願い、聞いてくれる?」
「………」

夢見させてやったんだから金出せとかだったらどうしよう。
……今年もらったお年玉はまだ手つかずだったはず。
私を好きにしてとか言われたらどうしよう。
……え、どこ?何からすればいいの?
下僕になれとか言われたらどうしよう。
……喜んでって言えばいいかな。


「……なに?その不安そうな顔」

俺の表情を見て、くすくすと笑う。
そんなに情けない顔してたかな。

< 308 / 323 >

この作品をシェア

pagetop