Dear Hero
「しかしまぁ、そんな事言うなんてダイくんも大人になったねぇ」
「お前は俺の姉ちゃんか」
「だって小学生の時から見てるんだよ?涙ぐましいよ」
「うっせ」

空になったグラスにどんどんビールを注いでやるも、あっという間に空になるのにケロッとしてやがる。
この中で一番の酒豪は紺野だ。
酔ってる所を見た事がない。


「そういうところなのかなぁ?最近、ダイくんがモテてるって噂をよく聞くの」
「はぁ?俺が?」
「本人が気づいてないだけでね。法学部の飲み会、お前も結構狙われてるよ」
「……大護のくせに。体ばっかデカくなりやがって…」
「あぁ確かに。大学入って10キロ増えたわ」
「身長もだろ。孝介と並んでんじゃん」
「体作ってるからなぁ。てゆうか別に今更モテなくていいよ。他の女興味ないし」
「それ!そこなのよ!柔道部副主将、彼女一筋でどんなに誘ってもなびかない!ぶっきらぼうな物言いなのに相手を傷つけない優しさが、硬派でイイ!って学部の子が言ってた」
「なにそれ…」

肉を取ろうと箸を延ばしたら、哲ちゃんに横取りされた。
恨みがましく睨まれている。

紺野は手を合わせて、うっとりと乙女のようなポーズでまくし立てる。
酔わないけど、テンション上がって饒舌になるのが若干めんどくさい。言わないけど。
紺野の学部といえばスポーツ科学部。
師匠の道場を継ぐわけではないけど、スポーツに係る事をしていきたいと選んだそうだ。
スポーツ科学部とは、授業の一環とかで部活で一緒になる事も多いけど、そんな風に見られていたとは。

確かに、大学に入ってから女の子に声かけられる事は多くなった。
恥ずかしながら、告白された事も何度かある。
全部知らない人だった。
よく知らない人から「好き」なんて言われても、俺のどこがそんなにいいのかわからないし、何より俺には依しか見えていないし。
相手を傷つけないようにというより、逆上されるのが怖いだけで優しさのつもりではないんだけどな。

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