Dear Hero
『水嶋さんはとても真面目で成績優秀。皆が嫌がる事も率先してやってくれる、模範的な生徒ですよ』
三者面談では必ずそう言われていた。そして、
『ただ…あまり特定のお友達はいないようですね…。あ、決して仲が悪いという訳ではなく、表向きは上手くやれているようなのですが…』
そう続いていた。


若い男と幼い女の子との二人暮らし。
周りの目は想像以上に厳しかった。
ロリコン、誘拐、援助交際、隠し子、etc…もちろん俺にそんな趣味はない。
俺が悪く言われるのは我慢できるけど、依までもが冷ややかな目で見られるのは辛かった。
依自身が口に出さなかったからあえて触れなかったけど、学校で何度も嫌な目に合っていたんじゃないのかな。
何もしてあげられなかった事に、自分の無力さを痛感させられた。


一度だけ、友達について聞いてみた事があった。

『新しいクラスはどうだ?友達はできそうか?』
『親切な人はたくさんいるよ。でも、友達にはなれない』
『なんで…』
『仲良くなってお友達になれても、わがまま言って頼っていつか迷惑をかけてしまうから。そうして離れていってしまうなら、最初から一人でいた方が楽だよ』

哀しそうな笑顔が居た堪れなかった。
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