秋の月は日々戯れに
何事もなく二人でテレビを見て、寝るときも、彼女は確かに彼が敷いた布団の上にいて“おやすみなさい”と笑顔で言っていた。
それなのに――――起きたらもう、そこに彼女はいなかった。
「何かあったら、いつでも言ってくださいね。オレ何もできませんけど、いくらでも話聞きますし、飲みにだって、毎日でも付き合いますから!」
心配そうな表情から一転、気合い充分に拳を握ってみせる後輩。
「お前は酔うと面倒くさいから、サシは却下だ」
その気合いをすげなく彼が断ると
「だ、大丈夫っすよ!もう先輩にご迷惑はおかけしません。オレ、烏龍茶多めでいくので!」
後輩は、慌てたようにそう言った。
「お前みたいな奴って、烏龍茶でも酔いそうだよな。雰囲気に呑まれるっていうのか」
「流石にオレ、そこまで酷くはないっすよ!?」
過去の失態をなんやかんやと弁解する後輩に、彼が揚げ足を取るような言葉を返していると、いつの間にかそこにクリームパン片手の先輩も混じって、二対一の後輩には分の悪い構図が出来上がる。
「だから、あれは違うんすよ!オレは烏龍茶を頼んだのに」
「いや、あの時お前は確かにウーロンハイって言ったね」
「“茶”って言いました!」
「いや、“ハイ”って言った」