秋の月は日々戯れに
そんな二人のやりとりを聞きながら、彼は密かに笑みを零す。
声を出して笑うと、また後輩が拗ねるから、声は抑えて表情だけで笑う。
それから、山の上から一つチョコレートを取って口に入れると、缶コーヒーも開けて一緒に流し込んだ。
ほろ苦くて、甘くて、やっぱり苦い――なのに不思議と、心が満たされるような気がするのはなぜなのか。
「先輩!オレが夏の飲み会で頼んだのって、烏龍茶とフライドポテトっすよね」
「いいや、ウーロンハイとポテトだ」
どっちが正解かと問いかけてくる二つの視線に、彼はひとまず苦笑する。
「そもそも俺、夏の飲み会は参加してませんから」
そう言えばそうだった!とでも言いたげな二人の表情が可笑しくて、彼は笑う。
彼女がいなくなってしまってからの何とも言えない虚無感が、この瞬間にほんの少しだけ埋まった。
また穴は空くのかもしれないけれど、それでも今は、二人のやり取りが見ていて面白いから、何も考えずに笑っていられる。
「じゃあもうこの際、ジャンケンで決めましょうよ!」
「そうだな。勝った方が正しいってことで」
よく分からないままに始まったジャンケンを眺めながら、彼はまたコーヒーを啜る。
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