秋の月は日々戯れに

そんな二人のやりとりを聞きながら、彼は密かに笑みを零す。

声を出して笑うと、また後輩が拗ねるから、声は抑えて表情だけで笑う。

それから、山の上から一つチョコレートを取って口に入れると、缶コーヒーも開けて一緒に流し込んだ。

ほろ苦くて、甘くて、やっぱり苦い――なのに不思議と、心が満たされるような気がするのはなぜなのか。


「先輩!オレが夏の飲み会で頼んだのって、烏龍茶とフライドポテトっすよね」

「いいや、ウーロンハイとポテトだ」


どっちが正解かと問いかけてくる二つの視線に、彼はひとまず苦笑する。


「そもそも俺、夏の飲み会は参加してませんから」


そう言えばそうだった!とでも言いたげな二人の表情が可笑しくて、彼は笑う。

彼女がいなくなってしまってからの何とも言えない虚無感が、この瞬間にほんの少しだけ埋まった。

また穴は空くのかもしれないけれど、それでも今は、二人のやり取りが見ていて面白いから、何も考えずに笑っていられる。


「じゃあもうこの際、ジャンケンで決めましょうよ!」

「そうだな。勝った方が正しいってことで」


よく分からないままに始まったジャンケンを眺めながら、彼はまたコーヒーを啜る。



.
< 298 / 399 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop