秋の月は日々戯れに
ぼんやりとしていた彼は、受付嬢の言葉にハッとして、なんでもないのだと笑みを浮かべる。
今日は、なんだか心配されてばっかりだな。そんなに顔色が悪いのか――と頭の隅で考えながら、彼はこれ以上何か突っ込まれる前にこの場を切り抜ける方法を探す。
そして咄嗟に思いついた彼は「甘いもの好きか?」と問いかけながら、鞄を開けて中をあさった。
「良かったらこれ。貰い物で悪いけど」
取り出したのは、今日一日かけて先輩から貰った大量のチョコレート。
後輩にも一掴み分けたものを、受付嬢にも同じだけ渡す。
咄嗟に差し出した両手にのせられたチョコレートに、受付嬢は驚きで目を瞬く。
その表情がどこか後輩に似ていて思わず笑ってしまった彼は、不思議そうに自分を見つめる受付嬢に、先輩から貰った話を伝えた。
「なるほど、どうりで見覚えがあると思いました。あの方、今の季節はチョコですけど、夏場は暑くてチョコは溶けるって、代わりに大量のキャラメルとか、飴とかを持ち歩いているんですよ。コーヒーも砂糖は絶対三本は入れますし、ココアにも砂糖を入れるんです。本人は隠しているつもりみたいですけど、全然隠しきれていない甘党なんです」