秋の月は日々戯れに
その顔が妙に晴れ晴れとしていて、なんだか楽しそうで、思わず彼は「何かいいことでもあったか?」と問いかける。
受付嬢は、またいたずらっ子みたいな顔で「秘密です」と意味ありげな笑みを浮かべた。
「私とさやかさんだけの秘密なので、こればっかりはお教えできません」
すみませんと頭を下げた受付嬢は、顔をあげて晴れやかに笑う。
よほど、いいことがあったらしい。
気にはなるけれど、教えてはくれないそうなので、これ以上は聞かないでおく。
「やっぱり拓はヘタレの大バカですけど、人を見る目だけは確かでした。さやかさんは、拓にはもったいないくらいの素敵な人です」
「そっか」とだけ返して、受付嬢の笑みに合わせるように笑ってみせる。
「また、降ってきましたね。お昼までは晴れていたのに」
不意に話題が変わって、受付嬢の視線が、彼を通り越して遠くに向かう。
出入り口のガラス張りになった扉の向こうで、雪がチラチラと舞っていた。
本格的な冬の訪れと共に、雪は日に日にその勢いを増していて、徐々に景色を白く染め上げていく。
目に映るもの全てが白くて、外に出れば凍えるように寒くて――その白さと寒さは、どうしようもなく彼女を思い起こさせた。