秋の月は日々戯れに
「……何をしてるんですか」
氷水の中に手を突っ込んでいるような感覚の中、彼は問いかける。
彼女は、とても真剣な顔で手を握り締めたまま口を開いた。
「あなたという人は、基本的にとんでもなく冷たい方ですからね。さては、手が温かいのではないかと思いまして、今冷やしているところです。手が温かいのは心が冷たい証拠ですから」
真剣そのものな顔で、彼女は相変わらずとんちんかんな事を言い放つ。
「……温かさとか、ちゃんと分かってるんですか?」
冷たいのを我慢して素朴な疑問を口にしたら、彼女が勢いよく顔を上げた。
「もちろん、分かりません!」
答えてまたすぐ下を向いた彼女は、未だ真剣に彼の手を握り続ける。
「でも気合です。気合で感じ取ってみせます」
なんだかもう面倒くさくなってきたから「そうですか」と気のない返事をして、彼はいつの間にか止めてしまっていた足を動かす。
それに釣られるようにして、彼女も一緒に歩き出した。