秋の月は日々戯れに


「結局、冷たいんですか?それとも温かいんですか?」

「今はあなたのせいで死ぬほど冷たいです」

「よくもまあ、幽霊なわたしに向かって“死ぬ”なんて言葉を安易に使えますね。どうやら、まだ冷やし具合が足りないようです」

「そんなこと気にするような繊細な心なんて持ち合わせてないくせに。大体、手が温かいと心が冷たいなんて迷信ですよ」

「前半にサラッと言った失礼な発言の撤回を要求します」


なんだかんだ言いながらも握る手を離そうとしない彼女に、珍しく好き勝手にさせたままで彼は歩き続ける。

どうせやめろと言ったってやめないのだ、それなら無駄な言い合いをしてすれ違う人達に変な目で見られるよりも、冷たいのを我慢して歩いている方がずっといい。

そんな彼の心の内など露知らず、彼女は未だ撤回を求める声をあげ続ける。


「事実ですから。撤回する理由がありません」

「事実無根です!とっても繊細なわたしの心は、激しく撤回を求めています」

「はいはい。じゃあ撤回で」

「もっと心を込めてください!!」
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