One Night Lover
華乃は渉と簡単にそうなった自分が信じられなかった。

5年も片思いし続けてあんなに恋い焦がれていた渉と寝るのはもちろん嫌じゃなかった。

嫌ではなかったが、終わった後、
兄みたいな渉が男に変わった途端、
その関係は何となく居心地が悪かった。

健のことで不安定なってたとは言え、あまりに自分が簡単過ぎた気がした。

それにしても昨日の渉はいつもとは別人格で
優しくて爽やかな印象とはまるで違っていて
動物的で激しかった。

華乃はそんな事を考えて渉としたみたいに
また藤ヶ瀬との夢を見て身を焦がす自分をどうかしてると思った。

渉も結局はただの男で妹みたいにしか思えない女ですら抱けるし、
自分は自分で藤ヶ瀬の事を思いながら他の男と寝られるのだ。

そう思うと華乃は愛とか恋とか色んなことがわからなくなった。

健は昨夜から何度も華乃に連絡していたが
華乃は電話に出なかった。

まさか華乃があの後、他の男と寝てたなんて健には想像もできなかった。

華乃の様子がおかしい事に気がついて
健はあの後、ベッドの上で光る片方だけのイヤリングを見つけた。

華乃はいつもほとんど同じシンプルなパールのピアスをしていて
こんなイヤリングはしない。

それに気がついた時、健の顔が青ざめた。

健はすぐにそのイヤリングの相手がわかった。

それはこの前のデザイン課の飲み会で酔った健を送った時に後輩の美南がワザと置いていった物だ。

華乃は健が浮気したと勘違いして
怒って帰ったんだろうと健は焦った。

実は健を送ったのは美南だけではなく、
もう1人の後輩である賢司も一緒だったから
健がいくら酔ってても賢司のいる前で美南と間違いを犯すハズがない。

「これお前のだろ?」

そのイヤリングを健が美南のデスクの上に放り投げると美南は舌を出した。

「バレました?」

「どういうつもりだよ?」

「もしかして華乃さんと揉めたりしました?」

美南は入社した時から健が好きだ。

そして華乃の事が嫌いだった。

華乃が明らかに自分より健を愛してないからだ。

怒ってる健を見て、美南はいい気味だと思った。

健がその事を弁解しに華乃に逢いに行ったが
華乃は席に居なかった。

周りを見回すと華乃のいる場所を
藤ヶ瀬が華乃を見つめる視線で気がついた。

その様子を見て華乃が昔、深鈴が葛城のことを目で追ってると言った話しを急に思い出した。









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