One Night Lover
新世界
華乃は次の日も会社を休んだ。

何もする気にならず
朝から漫画を読んだ。

お腹が空いたがご飯を食べる気にもならず
近くにあったお菓子を食べ
ゴロゴロしてる間に半日が過ぎた。

会社の昼休みの時間になって藤ヶ瀬からやっと連絡が来た。

「具合悪いのか?」

「…部長が逢いに来てくれないから。」

「今晩、仕事が終わったら行くから大人しく寝てろよ。」

華乃は嬉しくて飛び上がりそうだったが
その気持ちを抑えて

「来なくていいです。」

と強がった。

「うるさい。寝てろ!」

そう言って藤ヶ瀬は電話を切った。

華乃は読んでいた漫画本を閉じて
部屋の掃除を始めた。

シャワーを浴び、自分も綺麗に磨いて
藤ヶ瀬のために夕飯の支度をした。

そろそろ藤ヶ瀬が来る頃だと思って
シチューを温めようとすると電話が鳴った。

「華乃…悪いけど用事が出来て行けなくなった。」

藤ヶ瀬の声が遠くに聞こえた。

「もういい!今日来なかったから別れる!」

華乃はそう言って電話を切った。

するとSNSにメッセージが入った。

藤ヶ瀬から一行の短いメールだった。

《今度埋め合わせするから許してくれ》

華乃は電話を放り投げた。

その時、誰かが訪ねて来た。

華乃は藤ヶ瀬のサプライズかと思って喜んでドアを開けると健が立っていた。

華乃の笑顔が消えて

「あからさまにガッカリした顔するなよ。」

と健が言った。

そして何も言わずズカズカと部屋に上がった。
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