One Night Lover
「ちょっと、勝手に上がらないで。」

止める華乃を物ともせず健は部屋に入って
テーブルの上に並んだ料理を見て

「誰か来るの?」

と聞いて唐揚げを1つ指でつまんで口に入れた。

「帰ってよ。何しに来たの?」

「藤ヶ瀬なら来ないよ。

さっき血相を変えて急いで車に乗るのを見た。

お前の家と反対方向だった。

なんかあったんじゃないかな?」

華乃は急用が出来たのは嘘じゃなかったと少し安心した。

「それで健は何しに来たの?」

「何で会社休んでんの?

具合悪いようには見えないけど…」

華乃は何も言わず、ワインを開けるとそれを口に含んだ。

「健も飲む?」

「いいね。」

そう言って二人でワインを飲んで
目の前の料理を食べ始めた。

「華乃の料理久しぶりだな。」

「食べたら帰ってよ。」

健は華乃が強がってるとわかってる。

本当は寂しくて帰って欲しくないんだろう。

「お前さ、ホントにアイツでいいわけ?

このままじゃお前の才能埋もれるぞ。

もう一度梨沙に話し通してやるから面接行けよ。」

華乃は健が雨来梨沙を呼び捨てにしたのが気にかかった。

「梨沙?」

「あ…雨来梨沙。」

「先輩でしょ?何で呼び捨て?そういう仲?」

健が目を逸らしたので華乃はピンと来た。

「なるほどね。そうなんだ。」

「昔のことだよ。お前と知り合うずっと前に…付き合ってた。」

華乃は意外なカップルに少し驚いた。

健と梨沙は結構年が離れてる。

10代の頃のその年齢差は少し違和感があった。

「ずっと前っていつ頃?
雨来梨沙って結構年上だよね?」

「関係ねぇよ。たかが8つだろ?」

「今の私達と同じ年だとしたら17歳?

ありえないって。

今、17の高校生と付き合えって言われても無理だー。」

「お前、もう26だろ?18だよ。」

「そんなん変わらんよ。

雨来梨沙、淫行じゃん。」

「お前に何がわかる。」

急に健が真顔で怒ったので華乃はビックリした。

「ごめん。関係ないね。昔のことだもんね。

健って案外やるね。

高校生の頃、年上の女と付き合ってる男って結構カッコいいよね。」

華乃は言い過ぎたと思って取り繕った。

その瞬間、健が華乃にいきなりキスをした。









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