お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 なにが好きで、なにが苦手で、どんなことが許せなくて、なにを大事にしているか――。
 澄花が結婚式の夜に問いかけたことだ。

 あの時の龍一郎には、『俺のことなど、知ってどうする』と、拒否されてしまったが、今目の前にいる龍一郎は、自分の夢を語ってくれている。


(これって……ものすごい進歩なのでは……?)


「龍一郎さん、あの……今のお話ですけど、もっと聞きたいです」


 思わず澄花は感動して、いらないことを口走っていた。

 すると龍一郎は、どこか戸惑ったように口ごもり、ごまかすようにカップを口に運んで唇を引き結んだ。


「――いや、いらない話だった」
「どうしてですか、素敵な話なのに。もっと聞きたいです」
「どうしてもこうしても……今、俺が口にしたのは、KATSURAGIの副社長として意味のある言葉じゃない。ただの夢物語だ」
「そんな……夢物語のなにが悪いんですか」


 思わず責めるような口調になってしまったが、龍一郎は真面目な顔で首を横に振る。


「澄花、私の話はおしまいだ」


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