お気の毒さま、今日から君は俺の妻
結局、少しだけ暗くなってしまった雰囲気をどうにか誤魔化そうと、澄花はその後、ワインのグラスを重ねてしまった。アルコールには強いので酩酊したというほどではないが、少し頬が熱い。頭の芯が少しぼうっとしている。
澄花は自分の手のひらで頬を押さえ、ふうっと息を吐いた。
(少し飲み過ぎたかも……)
「――すみません、龍一郎さん。御化粧室に行ってきますね」
あとは帰るだけとはいえ、さすがにリップくらい塗っておきたい。
「ああ」
龍一郎はうなずき、テーブルから立ち上がる澄花を見上げた。
「ひとりで大丈夫か?」
いつもより澄花が飲み過ぎていること、そして普段履かないようなヒールのパンプスなのもあって、ひとりで歩けるか気になったようだ。
「はい、大丈夫ですよ。まだまだスキップできるくらいですから」
こっくりとうなずいたあと、澄花はその場で軽く跳ねるような仕草をした。
少しおどけすぎたかと思ったが、龍一郎はホッとしたように目を細めたので、澄花はポーチを持ってそのまま部屋を出る。
部屋を出ると廊下の少しだけひんやりした空気が冷たくて気持ちがいい。