お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「ピアスが……!」


 澄花は慌てて自分の耳たぶをつかんでいた。


「ピアス?」


 天宮はそこで、左耳に輝くピアスに気が付いたようだ。


「右耳にも同じピアスつけてたの?」
「はい。同じパールです!」


 顔から血の気がサーッと引いていくのが分かる。

 ピアスは数少ない母の形見だ。絶対に無くしてはいけない、大事なものだった。


「どうしよう、下に落ちてるかな……!」


 澄花は真っ青になって、床にしゃがみこんだ。

『Bastien』の床はフロアタイルが敷き詰められていて、しかも柄が幾何学模様で派手だ。ピアスがその上に落ちたとしたら、目で見て探すのは難しい。

 手のひらであちこちを撫でながら探したが、美しく磨かれた床にはゴミ一つ落ちていなかった。


「どうしようっ……大事なピアスなんですっ……お母さんのっ……!」


 白無垢もそうだが、母の遺品はそれほど多くない。しかもピアスという身に着けられるものはかなり特別だ。澄花は完全にパニックになっていた。美しいワンピースを着ていることも忘れて、ひざまずいたまま叫んでいた。

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