お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「龍兄ちゃん?」
「あ、はい。昔はそう呼んでたんですよ。一時期龍兄ちゃん、うちにいたから」
杉江の言葉に、心臓が跳ねる。
「うちにいた?」
その言葉がなぜかひっかかった。
確かに龍一郎の父と杉江の母がイトコ同士だと言っていた。そして小さい時から仲が良かったとも。だから行き来があったとしてもまったくおかしな話ではない。
(だけど……龍一郎さんと杉江さんは、ひとまわりは年が離れているはずだわ……)
ということはいくら杉江が小さい頃の話とはいえ、龍一郎はそれなりの年齢であるはずなのだ。
ではなぜ龍一郎は杉江の家に“いた”のだろう。
なにかそこに事情があったのではないのだろうか。
(私の知らない昔の龍一郎さんのこと……杉江さんは知っている)
「あ……」
その瞬間、杉江はハッとしたように目を開いた。
自分が言ってはいけないことを言ってしまったということに気が付いたようだ。