お気の毒さま、今日から君は俺の妻
『ええ。子供の頃からそうだったんだから、今だってそうだわ。そうに決まってる。ええ、きっとそうよ……なぜ終わったことだと決めつけてしまったのかしら……』
杉江の母はなぜ思い至らなかったのだろうと言わんばかりに、ため息をついた。
なんのことやらさっぱりわからないが、聞いた限りでは杉江の母には心当たりがあるようだ。
『わかりました。すぐに莞爾にメールするから、その住所に行ってみて』
そう言って、電話を切ってしまった。
(龍一郎さんの傷……)
どういうことだろうと思ったが、杉江のおかげで突破口が見えたのは間違いない。
「お母様、メールをくださるそうです」
スマホを杉江に返すと、数分も経たずにスマホが震える。
杉江はそれを見ながらすぐに胸ポケットから手帳を取り出し、美しい字で書き写し澄花に差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう……!」
澄花はメモを貰って、何度も頭を下げたが、杉江は逆に申し訳なさそうに首を振った。
「俺も昔のことは詳しくは知らないんです。だからうまく言えないんですけど……あなただったら、秘密主義の龍兄ちゃんの心の中に入れるかもしれない……御願いします」
そして深々と頭を下げたのだった。