お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 総務部を出た廊下で、背後から「栫さん!」と呼び止められる。


「はい?」


 いきなり出鼻をくじかれてしまった。澄花はいったい誰だろうと振り返る。もしかしたら不満が顔に出ていたかもしれない。だが廊下の向こうから、天宮が手を振りながら近づいてくるのが見えて、思わず背筋が伸びてしまった。


「天宮さん!」


 昨日の今日でなんだか恥ずかしいが、彼には迷惑をかけ通しだったことを思いだし、慌てて天宮のもとに駆け寄った。


「昨日はいろいろとご迷惑をおかけしました」
「手は大丈夫だった?」
「はい。テーピングのおかけで」


 澄花はしっかりとうなずき、左腕を軽く持ち上げて見せた。


「天宮さんはどうなさったんですか?」
「うん、実は総務に行こうと思っていたんだ」


 天宮はにっこりと笑って、スーツの内ポケットから小さな透明プラスティック袋を取り出した。


「これ、さっき総支配人から連絡があってね、君の家に持って行こうとしてたけど、俺が渡したほうが早いからって受け取ってきたんだ」


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