お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「お客さん、披露山公園につきましたよ」
「あっ、はい。降りますっ!」
アレコレと物思いにふけっている間に着いてしまったらしい。
慌てて澄花はもたれていたシートから体を起こし、お金を払ってタクシーを降りる。
実は住宅地の入り口には管理組合のゲートがあり、組合の管理人がチェックしている。どの家に用事がありますのでと告げればいいだけの話なのだが、もし万が一名乗って、龍一郎に自分が来ることがばれてしまったら元も子もない。
なのでここは公園から住宅に入るという裏技を使うことにした。
逗子の小高い山の上にある披露山公園からは江ノ島や葉山マリーナも一望できるらしい。夕日が落ちるころに来れば、さぞかし美しいだろう。
「龍一郎さんも見てるのかな……って、そんな場合ではないわ」
澄花は自分をしったスマホのナビを見ながら、スタスタと歩き始めた。
公園の隣がすぐに住宅地になっているので、迷うことはなかったが、あまりにも自分の知っている景色とは違うので、唖然としてしまった。
まず驚いたのは空が電線で区切られていないことだ。住宅建蔽率は二割と決まっているらしく、庭がどの家も広い。しかも広い敷地が壁や塀などで区切られていないため、豪邸がどこまでもどこまでも、続いているように見える。
「すごい……」