お気の毒さま、今日から君は俺の妻
本当は茶など飲んでいる場合ではないのかもしれないが、喉は緊張でカラカラだった。手を伸ばし、こくりと一口飲むと、じんわりとお茶の甘みが広がっていく。
「美味しいです」
「ありがとうございます」
古河はにっこりと笑って、澄花を見下ろした。
「奥様にここを教えたのは、本家のご両親ではないでしょう。なにかあったと思って教えるくらいなら、一緒に来ているはずです」
「――杉江さんのお母様に教えてもらいました」
「杉江の……ああ……わかりました。あの方は龍一郎さまを少しの間預かっていただいたことがありますから」
どうやら古河はなにもかもわかっているようだ。
澄花はもっていた茶碗を静かに置いて、古河を見上げた。
「龍一郎さんはどこに?」
「――奥様」
古河は一気になんともいえない申し訳なさそなうな表情になった。
「おかえり……いただけないでしょうか」
「どうしてですか」
その瞬間、澄花の目の中に抑えきれない感情の揺らぎが生まれた。